ウズベキスタン旅行記 2025 第5章(後編)― 古都ブハラ到着編

Uzbekistan 2025 – Arrival and Evening in Bukhara

Old town of Bukhara under the soft evening light / 夕方の柔らかな光に包まれたブハラ旧市街
夕方の光に染まるブハラ旧市街。この街での最初の一夜が始まる。

タシケントから空路でブハラへ

窓の下には、乾いた大地が地平線の彼方まで広がり、そのあいだに点々と緑のオアシスが浮かんでいる。 タシケントの都会的な景色とはまるで違う、古都の気配が少しずつ近づいてくるのを肌で感じるフライトだった。

午後、ブハラ空港に到着。タシケントの国際線ターミナルと比べればずっとこぢんまりとした、地方のローカル空港だ。 出口へ向かって歩いていくと、すぐに外の強い光と熱気に包まれる。観光客と地元の人々が入り混じる、独特のざわめきが心地よい。

Small regional terminal of Bukhara Airport / ブハラ空港のこぢんまりとした地方ターミナル
タシケントから約1時間半。物語の舞台となるブハラの空港に到着。

「ここからブハラの物語が始まる」。そう実感させてくれる空港だった。

Yandexタクシーで宿へ

ここからは Yandex Taxi で宿へ向かう……と言いたいところだが、空港出口のすぐ目の前までタクシーが入って来られない。 少し歩いて広い道まで移動し、そこでアプリで配車をかける。

迎えに来てくれたのは、ウズベク音楽が大好きな柔和なおっちゃんドライバー。 「音が大きすぎる?」と聞かれて、「そのままで大丈夫。ウズベク音楽、好きなんです」と答えると、にっこり笑って音量を少しだけ上げてくれた。 そんなやりとりを交えながら、車はブハラ市内へ向かって走り出す。

ウズベキスタンでは日本車はほとんど見かけず、街を走るのはほぼシボレー。国内に工場があるからだという。 ただ今回は、初めて中国メーカー・BYDの車に乗ることになった。それもまた新鮮な体験だった。

目的地は、ラビハウズ近くのゲストハウス「Saidkasim with a Terrace」

Entrance of guesthouse Saidkasim with a Terrace in Bukhara / ブハラのゲストハウス「Saidkasim with a Terrace」の入口
目的のホテルにやっとたどり着く。

ただし旧市街は迷路のように入り組んでいて、案の定ドライバーも途中で迷子気味に。 何度も地元の人に道を尋ねながら、それでも根気よく最後まで送り届けてくれた。ありがたい限りだ。

ホテルは家族経営で、テラスでの朝食が評判のお宿。今回は少し奮発して、トリプルルームをシングルユースで予約している。

Room view guesthouse Saidkasim with a Terrace in Bukhara / ブハラのゲストハウス「Saidkasim with a Terrace」の客室
今回の部屋の様子

チェックインの手続きをしてくれたのは、オーナー夫婦の息子さん。 やんちゃ盛りの年頃だが、パスポートの確認から鍵の受け渡しまで、しっかりとこなしてくれた。

Entrance of guesthouse Saidkasim with a Terrace in Bukhara / ブハラのゲストハウス「Saidkasim with a Terrace」の入口
今回の拠点となるゲストハウス。家族経営ならではの温かい雰囲気。

フロントまわりから中庭へと続くスペースには、穏やかなイスラム風の空気が静かに流れていた。

街歩きとブハラ・ビエンナーレ

翌日の本格的な街歩きに備え、この日は軽く予行演習。まずはホテル周辺をぐるりと歩き、帰り道を間違えないようにルートを頭に入れておく。 その足で、街歩きの起点となるラビハウズ方面へ向かった。

Evening walk in the old town streets of Bukhara / 夕方のブハラ旧市街を歩く路地散策の風景
夕方の光に包まれた路地を、予行演習がてらゆっくりと歩く。

道すがら、不思議なアート作品が目に飛び込んでくる。キャラバンサライの中庭では、何やらイベントが開催されているようだ。 

Art installation in a caravanserai courtyard in Bukhara / ブハラのキャラバンサライ中庭に展示されたアート作品
キャラバンサライの中庭には、ブハラ・ビエンナーレのアート作品がひっそりと佇んでいた。

 ラビハウズの人工池のほとりをぐるりと回り、

Lyabi-Hauz pool and surrounding restaurants in Bukhara / ブハラ・ラビハウズの人工池と周辺のレストラン
ラビハウズの池を説明したプレート。

レストランのテラス席で、柔らかな日差しを浴びながらビールを一杯。 旅先で喉を潤すこの瞬間、「ああ、本当に来てよかった」としみじみ思う。

Beer on a terrace near Lyabi-Hauz, Bukhara / ラビハウズ近くのテラスで飲むビール
ラビハウズの池のまわりには、テラス席を備えたレストランがずらりと並ぶ。

ブハラはコンパクトな街で、一本道を進んでいけば、たいていの名所には歩いてたどり着くことができる。 さらに先へ進むと、パステルカラーで彩られたメドレセが姿を現した。

Pastel-colored madrasah decorated for the Bukhara Biennale / ブハラ・ビエンナーレの会場となったパステルカラーのメドレセ
ブハラ・ビエンナーレの会場にもなっていた、パステルカラーに彩られたメドレセ。

あ、そうだ。いまはウズベキスタン初開催のアートイベント、 ブハラ・ビエンナーレの真っ最中だった。

Heart-shaped panels introducing artists at the Bukhara Biennale / ブハラ・ビエンナーレでアーティスト紹介が記されたハート型パネル
アーティスト名と作品紹介が書かれたハート型パネル。街全体がギャラリーのような雰囲気に。

アーティスト名と作品の紹介文がハート型のパネルに記され、街そのものがギャラリーになったような雰囲気だ。

私の街歩きの基本スタイルは、ガイドブックや Google Map に頼りすぎないこと。 あらかじめ全体の地図をざっくり頭に入れておけば、細かい道を間違えても大きく迷うことはない。


Ark Fortress and nearby landmarks in Bukhara / ブハラのアルク城と周辺のランドマーク
ブハラの象徴ともいえるアルク城。ランドマーク同士の位置関係を確かめながら歩く。

Historic streets and domes in Bukhara old town / ブハラ旧市街の歴史的なドーム状の通り
ドームが連なる商業エリア。中世から続く商いの空気が、今もほのかに残っている。

上の道、下の道、3つのタキ、いくつかのメドレセ、そしてアルク城やブハラタワー。 歩きながら、こうしたランドマーク同士の位置関係を一つひとつ確かめていく。 旧市街は中世の面影が濃く残る、まさに「歩くほどに深まる」街だった。

夜のブハラ ― ワインと人情

夜ごはんの本命は、評判のレストラン「Old Bukhara」。

Night view near Old Bukhara restaurant / レストラン「Old Bukhara」周辺の夜景
予約なしでは入れなかった人気店「Old Bukhara」。次回の楽しみに取っておくことにした。

ダメもとで入ってみると……やはり満席。人気ぶりを目の当たりにして、これはまたの機会にとっておくことにした。 代わりに、ナディール・ディヴァンベキの反対側にあるツーリスト向けレストランへ。

Tourist restaurant near Nadir Divan-Begi / ナディール・ディヴァンベキ近くのツーリストレストラン
この夜の夕食はこちらで。料理も雰囲気も、まずまず満足の一軒。

詳細は「外伝・レストラン編」に譲るとして、料理も雰囲気も、まずまず満足のいく夕食だった。

それでも、もう少しだけ飲みたい。そんな気分で旧市街を歩いていると、ふと気になる路地が目に留まる。

Night alley near the famous donut shop in Bukhara / ブハラ名物ドーナツ屋近くの夜の路地
名物ドーナツ屋の手前でふと立ち止まった路地。小さな発見は、たいていこういう場所から始まる。

噂のドーナツ屋の手前に、灯りのこぼれる小さな店を見つける。

Entrance of Uzbek wine tasting bar in Bukhara / ブハラのウズベクワイン・テイスティングバー入口
たどり着いたのは、ウズベキスタン産ワインのテイスティングバー。その佇まいに引き寄せられる。

看板によれば、ウズベキスタン産ワインのテイスティングバーらしい。 これは素通りできない。

店に入ると、小さなカウンターとテーブル席が2つだけの、こじんまりとした空間。 カウンターの棚には、ウズベキスタン各地のワインボトルがずらりと並んでいる。 シャフリサーブスの超辛口ホワイト、グルジアのサペラヴィ種をブハラのワイナリーで熟成させたセミスイートなど、説明を聞くだけでも楽しいラインナップだ。

Menu of eight-glass Uzbek wine tasting set / ウズベキスタン産ワイン8種のテイスティングセットのメニュー
ウズベキスタン各地のワイン8種を飲み比べ。説明を聞くだけでも楽しいラインナップ。

ワインは8種類のテイスティングセットを注文。 カウンターの向こう側に立つバーテンダーのお兄さんが、一つひとつの銘柄の特徴を丁寧に説明してくれる。

Bartender explaining different Uzbek wines at the tasting bar / ウズベクワインの特徴を丁寧に説明してくれるテイスティングバーのバーテンダー
Bartender explaining different Uzbek wines at the tasting bar / ウズベクワインの特徴を丁寧に説明してくれるテイスティングバーのバーテンダー

マスターはロシア語オンリーだが、身振り手振りと片言の英語を交えれば何とかなる。 

Very dry red wine served at the Uzbek wine bar / ウズベクワインバーでサーブされたとてもドライな赤ワイン
とってもドライな赤

Pomegranate wine served at the Uzbek wine tasting bar / ウズベクワイン・テイスティングバーで出てきたザクロのワイン
これはザクロのワイン

8種類のテイスティングが終わると、「ウズベキスタン産のコニャック試してみる ?」というお誘い。もちろんです。ここまで来たら最後まで。そこで出てきたのがこの4銘柄。

Four bottles of Uzbek brandy served after the wine tasting / ワインテイスティングの後にサーブされたウズベキスタン産ブランデー4銘柄
テイスティングの締めはウズベク産ブランデー4種。若い順に味わいながら、ブハラの夜は静かに更けていく。

若いものから順番にサーブしてもらいました。いずれも深い味わい。イスラムの国でここまでいろんなアルコールを楽しめるのはここだけ。

観光地のど真ん中にある店なのに、店内はどこか落ち着いていて、 旅人と地元の常連さんが自然に混じり合うような空気がとても心地よい。

グラスを傾けながら、石畳をなでる夜風を感じていると、 「ああ、自分はいまブハラにいるんだな」という実感が、ようやく体の奥からじわじわと湧き上がってくる。 夜の風は思いのほか涼しく、ブハラ初日の締めくくりにぴったりの時間だった。

こうしてブハラ初日の夜は静かに更けていく。
次回は――いよいよブハラ旧市街を本格的に歩く、「第6章(前編)ブハラ、本格的な街歩き」へ。


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