Berlin Chronicles 2017 ー 第6章:不自由の中の幸福 ― DDR Museum
Chapter 6: Everyday Joys in the German Democratic Republic
ベルリン中心部、シュプレー川沿い。
その静かな水面のそばに、旧東ドイツの日常を丸ごと体験できる「DDR Museum」がある。 ここでは、イデオロギーや政治ではなく、そこに生きていた人々の生活が主役だ。
現在のベルリンでも、旧東、ドイツ民主共和国(Deutsche Demokratische Republik - DDR)をテーマにした博物館とか、雑貨を集めた店とか、レストランがたくさんあります。これはシュプレー河畔にあるDDR Museum。うっかり見過ごしてしまいそうなところにありますが、当時の庶民生活を再現したスペースとか、工業製品などの展示や、社会風潮が紹介されている、とても興味深い博物館です。
一番面白かったのは、当時のエレベーター。フロアを通過するたびに、やたらと広い箱がとんでもなく激しく揺れて、しかも照明が消える。便利なようで、不便な施設だったかのかもしれません。
もちろん、当時の国民車、通称トラビー、Trabantもありましたし、バイクとか映写機も展示されています。そうそう、今でもこのトラビーで街中をドライブというサービスもあるそうです。
再現された“もうひとつの暮らし
東西に分断されたベルリンでは、西側と東側の格差は言うまでもなく、ベルリンの壁とか、秘密警察Stasi(シュタージ)とか、とかく東にはマイナスのイメージがありました。
展示室には、1980年代の一般的な家庭がそのまま再現されている。
ソファの形、ブラウン管テレビ、キッチンの調味料棚、洗剤のパッケージ。
どれもどこか懐かしく、あたたかい。
制約の中でも、ひとりひとりが「日常を楽しもう」としていた跡がそこにある。
実際、生活も質素で、DDR Museumで再現されていた当時のキッチンとか、
不足する物資を補うために、古い材料を再利用したり、 家族や友人で協力して工夫を重ねる――そんな“生きる知恵”が感じられる。
リビングルームもこんな感じ。でもランプシェードの装飾には、ちょっとでも楽しく、という工夫が感じられます。
リビングルームもこんな感じ。でもランプシェードの装飾には、ちょっとでも楽しく、という工夫が感じられます。
それはキッチンやダイニングでも一緒で、カラフルなプラスティック製の食器なんかを使って生活に潤いを求めていたようです。これは、eierbecher(卵置き)。地味な食卓でも、こんな食器があれば多少なりとも華やかになったんでしょうね。
新鮮な物資も少なく、野菜も酢漬けにしたり、果物もジャムとかにして保存がきくようにしていたそうです。例えば、名物、狩人のシュニッツェルJaegerschnitzeは肉ではなく、保存のきくハム、つまりハムカツだったそうです。
だから、当時の人たちは、とてもつらい思いをしてきたのではないか、と思っていました。
が、先日のNHKドイツ語会話の中で出てきた、旧東ドイツで生まれ育った男性の言葉がとても心に残りましたし、地元で生きる強さのようなものを感じました。
壁”の向こうにもあった笑顔
Stasi Museumでは恐怖と沈黙が残っていた。 しかし、DDR Museumでは笑顔と温もりが残っている。 人はどんな社会でも、幸福を見出そうとする力を持っている。そんな静かなメッセージがこの場所から伝わってくる。
記憶を受け継ぐミュージアム
この博物館は、過去を批判するためではなく、 「その時代を生きた人々」を理解するために存在している。 壁が崩れたあとも、生活の記憶は文化として残り続ける。 ガラスケースの中の小さな日用品が、自由の意味を問いかけている。
「Ostalgieの流行がこのまま続けばいいと思っています。若い世代も旧東ドイツから何かを学び取ることができればと思います。東ドイツ時代は悪く言われることも多かったですが、わたしは素晴らしい素敵な子供時代を過ごしました。何かが足りなくて困ることもなく、すべてを持っていましたし、満ち足りていたのです。」
だから、今でも旧東ドイツのことを想いながら、何かやろうとしている。
それが、私が旧東に惹かれる理由の一つかもしれません。
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